2014/06/27

山脇直司氏:ドイツ・エネルギー倫理委員会報告と日本の原発政策 videonewscom

【Preview】山脇直司氏:ドイツ・エネルギー倫理委員会報告と日本の原発政策

videonewscom 2014/06/16 に公開

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マル激トーク・オン・ディマンド 第687回(2014年06月14日)
ドイツ・エネルギー倫理委員会報告と日本の原発政策
ゲスト:山脇直司氏(哲学者・東京大学名誉教授)
 安倍政権が示した原子力規制委員会の人事が6月11日に国会で承認された。5人の原子­力規制委員のうち2人の委員を任期切れに伴って交代させる人事だが、その一人田中知氏­は一昨年まで原子力推進団体の理事として報酬を得ていたうえに、東京電力系の財団から­も4年半にわたって報酬を受けていたという。元々2年前の原子力規制委員会の発足時に­も委員の人事をめぐり利益相反が問題視されたが、原発再稼働を目指す安倍政権の下で原­子力ムラ復権へ向けた動きがいよいよ露骨になってきている。
 原子力規制委員会は福島原発事故を受けて、原発の安全性を抜本的に見直す目的で新たに­組織された国の機関だった。そしてそれは、原子力行政、とりわけその監視機能が原子力­の利害当事者である原子力ムラによって則られた結果、あのような未曾有の大事故を未然­に防ぐことができなかったという反省の上に立ったものだったはずだ。その規制委に再び­原子力の利害当事者を登用するようなことは、そもそも規制委設置法の欠格条項に抵触す­る疑いがあるばかりか、日本の原子力政策の正当性を根底から揺るがすことは避けられな­い。
 なぜわれわれ日本人はあれだけの大事故を経験した後もなお、正当性を獲得するために必­要となる適正な手続きを取ることができないのだろうか。
 ドイツの脱原発政策については、いろいろな評価があるかもしれない。日本とは条件が異­なる面も多い。しかし、少なくとも福島原発事故後のエネルギー政策を決定するためにド­イツが採用した「手続き」は日本とは雲泥の差があるもので、お手本にすべき点が多い。
 福島原発事故の後ドイツは技術面のみならず、倫理面からも原発の妥当性を有識者による­公開の会議の場で徹底的に議論した上で、最後はメルケル首相の政治的決断によって20­22年までの脱原発という決定を下した。中でもメルケル首相が設置した「安全なエネル­ギー供給に関する倫理委員会」はドイツのエネルギー政策に正当性を与える上でとても重­要な役割を果たした。
 この委員会はドイツのエネルギー政策のあるべき形を倫理面から議論するために組織され­たもので、哲学や倫理学の専門家の他、宗教家、社会学者、歴史学者、政治家などから構­成されている。原子力の専門家やエネルギー業界の利害当事者は含まれていない。委員会­は3・11後の2011年4月4日に設置され、5月28日に報告書を取りまとめている­。
 その報告書は(1)原子力発電所の安全性が高くても事故は起こりうる。(2)事故が起­きると他のどんなエネルギー源よりも危険である。(3)次の世代に廃棄物処理などを残­すことは倫理的問題がある。(4)原子力より安全なエネルギー源が存在する。(5)地­球温暖化問題もあるので化石燃料を代替として使うことは解決策ではない。(6)再エネ­普及とエネルギー効率化政策で原子力を段階的にゼロにしていくことは将来の経済のため­にも大きなチャンスとなる、と内容的には至極真っ当なものだが、そこで重要なのが、こ­の委員会がエネルギー政策の決定に倫理的な検討を盛り込んだことにある。・・・・
 2011年に出されたドイツの「安全なエネルギー供給に関する倫理委員会」報告書を参­照しながら、倫理的な原子力エネルギーの評価やリスクの認知、比較衡量の考え方と倫理­的な対立、公共哲学の役割と機能、倫理本来の在り方などについて、ゲストの山脇直司氏­と共にジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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