五省(ごせい)とは、旧大日本帝国海軍の士官学校である海軍兵学校(現在は海上自衛隊幹部候補生学校)において用いられた五つの訓戒。
内容
- 一、至誠(しせい)に悖(もと)る勿(な)かりしか
- 真心に反する点はなかったか
- 一、言行に恥づる勿かりしか
- 言行不一致な点はなかったか
- 一、気力に缺(か)くる勿かりしか
- 精神力は十分であったか
- 一、努力に憾(うら)み勿かりしか
- 十分に努力したか
- 一、不精に亘(わた)る勿かりしか
- 最後まで十分に取り組んだか
概説
考案者は、当時、兵学校校長であった松下元少将。
今日では帝国海軍の精神を象徴する標語であるかのように語られることがあるが、五省が兵学校校舎に掲げられるようになったのは国内の軍国主義的色合いが濃くなり始めた1932年(昭和7年)からであり、その採用期間は海軍70余年の中でも末期の10数年間に過ぎない。古参の海軍軍人の中には、文語調箇条書きの五省を生徒に唱和させることについて、「(リベラリズムと柔軟性を重んじた)帝国海軍の伝統になじまない」として不快感を表明する者も少なからず存在した。
しかし、一方で、太平洋戦争後に日本を占領したアメリカ海軍の幹部が五省の精神に感銘を受け、英訳文をアナポリス海軍兵学校に掲示したり、日本国内でも、海上自衛隊が日々の行動を自省する標語として用いたりしている。現在、海軍兵学校の後継にあたる海上自衛隊幹部候補生学校及び海上自衛隊第1術科学校では、五省が旧海軍の伝統として継承されている。
若い頃は、こういう文章に出会うと虫唾が走ったものである。
今は、もうそういう感情はわかなくなった。
至極、真っ当な訓戒である。
ただ、この訓戒も組織経営者が省みてこそ萬余の価値のあるもので、兵卒が心に刻み励んだところとて、万分の一の成果しか生み出し得ない。かえすがえす残念なのは、形だけであれ、まっとうな教育を施そうとしながら、自らを省みなかった巨大組織、その経営者そのものである。
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