Photo by ロクさん
あるライブの打ち上げでのはなし。
高邁なはなしではない。
たまたま隣の席の青年は、ロクさんがライブ前に居酒屋で出会ってナンパしてきた連れてきたということらしい。
ほんとは歌舞伎を見るつもりだったけど、ロクさんがこっちの方が楽しいからと連れてきたという。本人は大いに楽しめたようだ。
はなしの成り行き上、彼が自衛官であると言うことがわかった。
まぁ、場所が悪い。
今ではウソのようだけど、ここは70年代から学生の集う場所で、その頃は、自衛官が来る場所ではなかった。
まぁ、こちらも大人になってるので議論をふっかけるするようなことはしない。
歩兵部隊に10年在籍し、PKOにも参加したという。
なら、その組織の良いとこも悪いとこも酸いも苦いも甘いも辛いも先刻承知だろう。諭すまでもない。
それでも酔った勢いか国を守るために命をかけるという。
PKOでも、情勢から言ってそのうち死人が出るに違いないが、それでも、また行きたいという。
こちらは、この後、まだ、仕事に行くので素面だ。
10年もやってれば、右から言われることも左から言われることもウンザリで聞くものいやだという。
まぁ、なんとも困った話しだが、こっちももう若くはないので息子に話しをするようなものだ。
なにを話せば良いのか?
「君が命をかけて守るというものはなんなのだろう?」
「日本国です。」
「日本国は、君たちを守り、顕彰してくれるのか?」
「・・・・・」
「日本国は、国民を護ってくれるのか?」
「もちろん護ります。そのための組織です。」
「建前はいい、本当にそう言い切れるか?」
「・・・・」
「まぁ、それは置くとして、君の組織は本当にこの国を護ろうとしているか?
疑問に思うことはないだろうか?」
「・・・・」
・・・・相当酔ってるし、答えたくないようだ・・・いろんな体験があるのだろうと思う。
まぁ、こんな議論をしても仕方がないので方向を変える。
「君が命を賭けて護れるひとは何人ぐらいだろう?
ぼくなら、武装していたとしても2、3人が関の山かと思うが・・・」
「実際は、そんなとこでしょうか?」
「君には家族があるか?」
「独身です。」
「愛する女がいて、ふたりの間に子供が出来ても、命を投げ出すことが出来るだろうか?」
「それは、ぼくも悩むところです。家族を持つと気持ちはどう変わるか想像がつきません。」
口ぶりでは、家族など持ちたくないような感じを受ける。
「それが普通だと思う。
たとえ今君は独身であっても、将来、君が幸せに出来るひとが何人もいるんだよ。
・・・今は見えないだけで。
ぼくは、その人たちのために命を賭けることの方が大切だと思う。
それは、君の思い次第ですぐにでも実現可能な話しだ。」
「ぼくたちが、国を護らなければ、そんなもの全部水の泡になってしまうではないですか?」
「ぼくは、この国は、総力戦になれば護れないと思っている。
出来ても離島での小競り合い程度だ。その小競り合いも勝てるか?」
「・・・・」
「米帝が日本にいたら米帝が総力戦を起こしたとき、ぼくたちの国は関わらずにすむか?」
「・・・・」
「ひとなんて大それたことを考えても出来ることはたかがしれている。
自分の手で自分に関わりのある人を護ることだけで精一杯だし、
その人たちを幸せにすることだけを考えた方が、
確かな生きる価値を見いだせると思うよ。
そうなれば、ほかのもののために命を賭けるなどと軽々にいえなくなると思うんだよ。」
「言われることは、わかりますが・・・やはり、ぼくの生きる道がありますし・・・」
「生き方を変えろとは言ってないし、言うつもりもない。
言いたいのは、早く自分が本当に護るべきものを見つけて欲しいと言うことだけなんだよ。
そうすれば、ぼくの言うことも、もっと実感として感じてもらえると思うんだよ。」
聞き飽きたはなしかもしれない。
ぼくは、まじめそうな青年にそれ以上言いたいことはなかった。仕事がまだ残っていたので、ここまでで中座させてもらった。
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