以下ユレッジより引用。
【加藤】先日、トークイベントにうかがった時に、福島の方が来られていて、今までは、やれることがわからなかったけど、やれることがわかったから、やれるようになった、というお話をされているのが印象的でした。『放射能は取り除ける』というタイトルの本を出版されたこと自体が、色々な人に、放射能を取り除けるのか取り除けないかという、根源的な問を投げかけていると思ったのですが、改めて今の除染の現場についてお話いただけますか。
【児玉】まず、住民の希望から申し上げます。先日、環境省が南相馬の小高地区、葛尾村で今避難している世帯の世帯主調査を行いました。戻る事をきめている人が29%、帰りたくないという人が26%、でも一番多かった44%の人は、まだ決められないという人で半数。どの程度、綺麗になるか、それによって、もし本当に国や自治体が地域を綺麗にしようとしているのであれば、戻りたいという人が多数だということです。
【加藤】現状、わからないことの方が多いということですよね。
【児玉】そうです。もう一つは、この間、オーストラリアの教授が来られて、一緒に食事をしていた時に、「日本人はよくやるなあ、ロシア人やオーストラリア人だったら、放射能降ったところはさっと捨てて、別の場所に皆移るよ、だけど日本じゃ、移るところがないね」とおっしゃいました。その時に私は、日本は水俣湾の底を浚渫して水銀を除いています、富山のカドミウムの溜まった畑を何百億とかけて土壌改良をやっています、四日市の空気を綺麗にしました、という話をしました。その四大公害裁判の結果として、アメリカのマスキー法(大気中のCO2を下げるための法案)ができた時に、日本のホンダがCVCCエンジンという低公害エンジンを開発できました。開発が行われていたのは浜松など東海地区、四日市の対岸でしょう。それを眺めて、綺麗なエンジンを作るべく取り組んでいたわけです。だから、経済成長できた。日本の場合は従来のものより環境に優しい技術を作ることで成長して来たのです。トヨタのプリウスであったり、東レなどがサウジアラビアでRO(逆浸透)膜で水を綺麗にすることに取り組んでいたりしていますよね。僕らはノーベル賞の田中さんのいる、島津製作所にお願いして、お米がチェルノブイリの400倍の速さで放射能の検査をできるようにしてもらいました。
よく、「除染ができない」という人は、チェルノブイリでできなかったじゃないかとおっしゃるのですが、ロシアの場合、ベラルーシとかウクライナですけど、平坦で使われてない場所が圧倒的に多い。ですからこの地域が汚れたらあちらに移しましょう、という方が新しい街を簡単に作れるわけです。だけど、日本で新しい街を作ると言っても、まず、なかなか他の地方公共団体はOKできないでしょう。ですから、日本の場合は優れた環境技術で、チェルノブイリとは違った対応の仕方をやらないと、本当に住民のためにならない。ただし、どういうものを求めるかというところは、住民が決めるべき問題ではないかと私は思っています。
今の日本の議論で一番おかしいのは、上から目線で、避難しなさいか、黙って我慢してれば良い、の二択しかない点です。これが住民に非常に苦痛になっている。避難するか、それとも踏み止まって綺麗にしていくかというのは住民が決めることであり、それを応援することが大事です。100万人近くの人が、ある程度の汚染地域で生きて、そこを綺麗にしようと言っている時には、きちんとした技術を提供して、その住民に応えていく、それから10万人を超える人が避難しているという実情のもとでは、その避難をしっかりサポートしていく、ということが大事じゃないかというのが基本的な考え方です。除染が無理じゃないか、という議論は、実際には現実の住民の希望とか住民の置かれた状況からスタートしていない。それが一番問題だと思っています。
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