研究会「シリア問題」黒木英充 東京外国語大学教授 2013.9.25
公開日: 2013/09/25
Hidemitsu Kuroki, Professor, Tokyo University of Foreign Studies
東京外国語大学の黒木英充教授(中東地域研究)が、シリア内戦の基本的な構図を歴史的な背景を交えて説明したうえで化学兵器使用疑惑についてはより詳細な検証が必要であると話した。
司会 日本記者クラブ企画委員 杉田弘毅(共同通信)
日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news...
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年10月号に掲載)
分裂に向かうシリア 停戦のための知恵を
反政府運動が始まって2年半、泥沼の内戦に陥ったシリア。化学兵器の使用の問題をめぐって事態が目まぐるしく展開する絶妙のタイミングで、シリア研究の第一人者・黒木教授の解説を聞くことができた。
まず、長期化とともに宗派紛争の様相を強め、外部勢力の介入により、いっそう複雑化したシリア内戦の現状が説明され、シリアの国土がアサド政権側、反政府勢力側、クルド人組織側の主に3地域に、しかも〝虫食い状〟に分裂しつつあると述べた。
次に、8月21日に起きた首都ダマスカス近郊での化学兵器事件についての分析が行われた。黒木氏は、果たしてアサド政権側が国連調査団がダマスカス入りした直後に、その目と鼻の先で化学兵器を使用するだろうか? それは〝自殺行為〟ともいえ、動機の点で疑問が大きいと指摘し、反政府勢力側の使用の可能性も含め、徹底的な調査と検証が必要だと述べた。
そのうえで、もしもアメリカによる軍事攻撃が起きたとすれば、問題はとてつもなく厄介になり、解決への望みを断ち切ることになっていただろう。事ここに立ち至ったいま、一刻も早く停戦を実現するために、全ての当事者ができる限り知恵を絞る必要があると訴えた。
紛争の底流には、オスマン帝国時代から続く都市と農村の格差と対立があると指摘したうえで、いつかは両者が和解し、ひとつの社会・国を再建しなければならないことは明白であり、そのためには、まず戦闘を停止することから始めなければならない。メンツを捨て、妥協する勇気を持たなければならないと主張した。そして、反政府勢力側に加わったアルカイダ系など過激派民兵の存在、武器や資金を提供する外国の介入が最大の障害となるだろうと結んだ。
長年の実地研究により、シリアの歴史と社会に精通した専門家ならではの主張であり、シリアに暮らす人々への深い愛情を感じた。
NHK解説委員
出川 展恒
2013/10/26
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